【改】33歳 酒好き女の妊娠出産・育児記

「酒好き女の妊娠記」改、「妊娠出産・育児記」として書いていきます。

【母乳ウォーズ 乳腺炎との戦い】 体験談編 その① おっぱいの反乱

乳腺炎

それは産後のママさんが恐れをなすもの。

 

「産後1ヶ月で乳腺炎になっちゃって大変でした」

「里帰りが終わったあとに乳腺炎になってしまい、実家から母が来てくれどうにか乗り切りました」

 

出産を終えた友人たちのfacebookに「乳腺炎」というキーワードはしばしば登場していた。先輩ママさんたちに聞いても口を揃えて「あれは辛い」という。

どうやらひどく大変らしい、ということは事前から知ってはいたが、正直そんなには意識していなかった。

これはわたしとおっぱいとの戦いの記録である。

最終的にはおっぱいは深夜に爆発し、わたしの勝利に終わるのであるが、そこに至るまでは本当に辛い道のりであった。

 

いままで当たり前のようにそばにいてくれて、仲がよかったわたしのおっぱい。

しかし出産を機に、彼女らは手に負えない暴れ馬に変わってしまったのである。

 

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「小林さん、なかなか母乳の出がいいですね」

助産師さんがわたしの乳首を笑顔でつねりあげながらいう。

ぴゅうぴゅう飛ぶ母乳。痛みでひきつるわたしの顔。

 

自分の乳首から母乳が出ている光景はひどく不思議だった。

身体の中でいままさに母乳が作られているということ。32年間まったく使っていなかった機能を使って白くて甘い液体が作られているのだ。

ちょっと油断すると身体の中の人が油断して、母乳が作られなくなるんじゃないかと心もとなく、わたしはいつも頭の中で「母乳できろ、母乳できろ」と母乳分泌イメージを繰り返していた。

 

最初に出がよかったのは右のおっぱい。白い糸のようにぴゅうぴゅうと飛んだ。

それに対し左のおっぱいは少し愚鈍。しかしやる気はあるらしくゆっくりと、しかし確実におっぱいをつくり貯めていった。結果、乳首からはあまり出ないものの左脇の下にぷっくりと熱をもった「副乳」ができた。

変なところに貯めていないでだそうよ…

しかし私たちはまだ母乳初心者なのだ。右胸も左胸も頑張って母乳を作っていることだけで素晴らしい。

 

2,300gで生まれたミミはもちろん口も小さい。

乳首とミミの口はほぼ同じくらいの大きさであり、当たり前だが彼の口の中に乳首をいれ吸わせるのはほぼ不可能であった。

 

搾乳器で母乳をしぼり、新生児用の小さな哺乳瓶に移す。

自分から出てきた薄黄色の液体を、自分の赤ちゃんが一生懸命喉を鳴らして飲んでいる光景はなんだかとても神々しく、そして愛おしかった。

病院の搾乳器はピジョンの手動のものであり、授乳が終わるとミミの顔を見ながら搾乳を開始する。

シュコシュコシュコ

赤ちゃんは可愛すぎて、無意識に歯ぎしりをしながら搾乳する。

寝顔をみて絞ると母乳の出がより一層良くなる気がした。

「すきすきすき!!」

まさに愛情たっぷりの母乳。

それは飲んだら胸焼けしそうな程濃く見えた。

 

そんなこんなで母乳+ときどきミルクの混合で一週間を過ごし、ミミは順調に大きくなり退院をした。

 

乳腺炎にならないように気をつけること」

退院のしおりに再度目を通す。

・水分をたくさんとること

・油っぽいものを食べ過ぎないこと

・疲れをためないこと

 

皆が怖いという乳腺炎。絶対ならないように気を付けようと固く心に誓った。

 

退院の日、家でのお祝いランチはいくら丼だった。

キラキラと輝く大粒のいくらが熱々のご飯にこれでもかと乗っている。

「お祝いでいただいたのよ。食べましょう!」

いくらはわたしの一番の好物といっても過言ではない。ごはんをおかわりし、いくら丼をこれでもか、とかっこむ。

帝王切開のあのお腹の痛さは、もう遠い昔のものとしてすっかり霞んでいた。

 

 

その日の夜、なんだか体調がおかしくなった。

 

うまく言えないのだが身体が重たい。いや、熱いのかもしれない。

とにかく感じたことのない、いやな感じに襲われる。

『なんか体調へんかも』

けーちゃんにLINEを送って早々と布団にも潜り込んだ。

 

「ふにゃふにゃふにゃ…」

ミミの小さな泣き声で目が覚める。

(あぁおっぱいあげなきゃ)

ぼんやりと覚醒している中で上半身を持ち上げようとする。

(あれ?起き上がれない?!)

上半身を上から押さえつけられてるような息苦しさを感じる。特に胸の上には大きなものが乗っているようだった。

頭も重く、鈍くギシギシと痛む。

それでもおっぱいを上げるためにどうにか起き上がった。

「なんだ…これ?」

授乳をしていると、次第に寒くなってきた。というか寒いかも、と感じた瞬間には歯の付け根があわなくなり、ガタガタと震えがきた。

(やばいやばいやばい!!)

乳腺炎」というワードが頭をよぎる。

 

でも普通乳腺炎って産後1ヶ月くらいになるんじゃ…

乳腺炎はおっぱいの飲み残しがあることによって乳腺が炎症をおこしー…』

ネットで予習しておいた知識をぼんやりと思い返しながら熱を計ると38度6分だった。平熱が35度代のわたしにとっては一大事だ。

とにかく寒くて寒くてたまらず授乳後すぐに布団に潜り込んだ。

真夏でムシムシした気温にも関わらず、ありったけの布団をかける。

それでも寒くてたまらなかった。ひょっとして急に気温が下がったのでは、と何度も隣に寝ているミミが寒くないか確認した。

 

どうにかウトウトと眠り、次の授乳時に起きると熱はさらに39度まで上がっていた。

とにかく寒気と頭痛がひどく、仰向けに眠ると胸に重石が乗ったように辛かった。